中国政府によるハイテク企業規制が相次ぐ、今後の中国株投資戦略を考察

中国政府によるハイテク企業への規制強化が相次いでいます。人口が多く今後の成長性を期待して世界中の投資家から注目を集めている中国株ですが、ここに来て、一党独裁体制国家により企業活動が制限されるというリスクが顕在化しています。しかしながら、中国による世界経済の影響も大きくなる中、今後の中国株への投資戦略を考えてみます。

中国政府によるハイテク企業への規制強化が相次ぐ

ここ近年、中国政府によるハイテク企業への規制強化が相次いでいます。規制強化のきっかけとなったのは、中国電子商取引大手阿里巴巴集団の金融子会社に対して、上場直前に政府の圧力によって上場を中止するという事情が発生して以降、中国ハイテク企業への規制が強まっています。

阿里巴巴集団は創業者による中国当局を批判する発言を行ったことをきっかけに、同社への圧力が強まるようになりました。支付宝(Alipay)を展開してい金融子会社が上場中止させられた他、主力事業である電子商取引も独占禁止法違反により多額の罰金が科せられています。

それに続いて、競合の騰訊控股に対しても、同様の独占禁止法違反による罰金を科せられた他、中国配車アプリの滴滴出行に対しても、米国のニューヨーク証券取引所に上場を果たした途端に、個人情報の国外移転などによる事案により当局から調査を受けていることを明らかにし、同社の株価は上場直後大幅に下落しました。

さらに、オンラインゲームへの規制強化や小中学生向けの学習塾を非営利として運営するように通達するなど、中国政府の政策による企業活動への影響が大きくなりつつあります。

香港ハンセンテック指数は最高値から40%程度下落

香港ハンセンテック指数の株価推移

このような状況の中、中国のナスダックとも呼ばれる、中国ハイテク銘柄を組み入れた株価指数「香港ハンセンテック指数」は、2021年2月以降下落局面で推移しています。

香港ハンセンテック指数は、2021年2月中旬に1万ポイントを記録して以降、2021年7月までに40%程度下落しており、2021年7月末6780ポイント前後で推移しています。

これまでは阿里巴巴集団など特定の企業に対して独占禁止法違反などを適用するにとどまっていましたが、7月下旬ごろから、中国当局や中国メディアが規制強化を相次いで発表もしくは報道したことから、投資家がそれに反応したことで、ハイテク企業全体が大きく売られる事になりました。

中国株投資のリスクが顕在化、政府は巨大化する企業経済圏の封じ込めを狙う?

近年のハイテク企業への規制強化により、中国株への投資リスクが顕在化してきていると言えます。当方が運営している投資情報サイト「株式投資の道」でも中国株について多くを取り上げていますが、以下の記事で、中国株に投資する短所として「企業活動が中国政府の政策に大きく影響する」ことを上げていますが、まさに、この状況は中国政府による政策への影響を大きく受けている状況になりつつあると言えます。

阿里巴巴集団や騰訊控股など、人民の生活に必要不可欠なインターネットサービスを提供することで大きく成長してきましたが、中国人民にとっては無くてはならない存在となる一方、中国政府によってこれらの企業が巨大化することで、政府による国家制御に影響を及ぼすことが懸念されます。そのため、中国政府は巨大化してその影響を及ばない内に、封じ込めを狙っている可能性も指摘されています。

例えば、中国政府は人民元の電子化(デジタル化)を進めていますが、それより先に電子決済サービスを提供していた支付宝(Alipay)や微信支付(WeChatPay)などが経済圏に浸透する中、中国政府による人民元デジタル化の政策にとっては邪魔な存在となるわけです。

中国株投資は中国政府が考えていることを先読みすることが重要

中国株への投資を行うに当たり、中国企業は米国や欧州とは異なり自由な経済圏で企業活動ができないということを意識する必要があります。また、中国はこれまで、最初は自由にやらせて後々規制を強化するというやり方を適用することで、経済を制御してきました。

中国では当局が不適切と判断した物やサービスについては、容赦なく規制対象となります。そのため、中国株投資においては、日本株や米国株以上に政府が考えていることを先読みすることが重要であると言えます。

常識的に考えて人民の生活に何かしらの悪影響を与えている物やサービス、中国政府にとって驚異となる物やサービスを提供している企業への投資は避けることが無難です。逆に、中国政府が産業の発展を後押ししている分野については、積極的な投資を行うことで大きな投資利益が狙えると言えそうです。

この記事を書いた人

私は投資家として国内、米国、中国株式を中心に運用を行っています。また、新たに法人を設立し、新規事業の開業準備を進めています。