JR東日本がオフピーク定期券の取り扱いを開始、日本企業の時差勤務制度(フレックスタイム制度)は根付くか?

JR東日本は、首都圏の路線で2023年3月より、混在している時間帯以外の定期券料金を10%割引する「オフピーク定期券」の取り扱いを開始する旨を発表しています。コロナ禍で一時的に在宅勤務などが増えましたが、近年では出社に戻す企業も多く、通勤時間帯の混雑も一般的となっている中、オフピーク定期券の取り扱いにより日本企業の時差勤務制度(フレックスタイム制度)は根付くのか考えてみました。
JR東日本が2023年3月よりオフピーク定期券を取り扱い開始

JR東日本は、首都圏の路線で2023年3月より、混雑している通勤時間帯以外の定期券料金を10%割り引く「オフピーク定期券」を取り扱い開始する旨を発表しています。
今回導入の目的は、混雑する時間帯を極力減らすことが目的としていますが、混雑している時間帯以外では値下げする代わりに、混雑する時間帯については、定期券の料金を平均1.4%値上げ、更に鉄道駅バリアフリー料金が加算されることになりますので、多くの人が出社する時間帯に従来どおり通勤する場合は、定期券料金が値上げされることになります。
対象は、同社が提供しているIC乗車券の「Suica」を対象で、磁気定期券や通学用の定期券は対象外としています。

オフピーク定期券を利用できる対象区間としては、北は大宮から南は久里浜まで、西は八王子(高尾)、東は千葉までが対象区間となっており、混雑時(ピーク)とされる時間も乗車駅によって異なります。例えば、都心からある程度距離がある八王子駅であれば6時30分から8時の間、横浜駅は7時から8時間、山手線内の駅であれば7時半から8時50分の間で設定されています。
混雑時間帯(ピーク時間)かそれ以外かの判断は、駅の改札を入場した時間によって判断がなされます。
日本企業の多くのが出社時刻である9時であることを考えると、八王子など郊外になるとその混雑時の時間帯も前倒しとなります。詳細については、以下のJR東日本のお知らせを御覧ください。
https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220916_ho01.pdf
首都圏鉄道各社が利用者増加を見込んだ設備投資を減らしつつある

首都圏の鉄道各社ではコロナ前までは、利用者増加を見込んで列車本数の増加や運行系統の見直しなど設備投資を積極的に進めていましたが、新型コロナが感染拡大して以降、在宅勤務を行う企業も増えたことで鉄道の利用者が激減し、これを機会に鉄道のあり方を再検討が進められているのも事実です。
例えば、JR東日本では2003年に東海道線及び横須賀線から山手線(貨物線)で新宿を経由して東北本線及び高崎線まで直通する「湘南新宿ライン」を開業したのを皮切りに、2015年に東海道線及び横須賀線から東京を経由して、東北本線及び高崎線、常磐線に直通する「上野東京ライン」を開通させました。
これ以前は、郊外から上京する旅客が主要駅で山手線や京浜東北線に乗り換える必要があり、劇的な混雑が見られていましたが、運行系統を見直すことで利用者増加と混雑緩和への対応を進めていました。
新型コロナが流行する少し前には、首都圏の鉄道においても混雑が激化しつつある状況の中、着席需要が増え、JR東日本も中央線を走っているE233系にグリーン車両を連結することを明らかにしている他、小田急電鉄も有料特急の特急ロマンスカーの増発や停車駅を増やしていたことや、京王電鉄や東急電鉄など私鉄各社でも着席ができる車両の投入を進めていました。
しかしながら、コロナが流行した今では鉄道各社は収益改善を優先的に進める必要性が増したことや人手不足も深刻化しつつある中、既存の設備を活用して収益を高める必要性が出てきてるのも事実です。
日本企業の通勤手当精算が複雑化することは必須。時差勤務(フレックス)導入は増えるか

JR東日本がオフピーク定期券を提供開始することから、この対応に追われるのは首都圏内に拠点をおく企業になります。多くの企業では従業員に通勤手当として定期券代を支給していますが、これまで通り9時出社といした場合、従業員一人一人の通勤手当が増えることになります。
そのため、企業は支給する通勤手当を削減するため、始業開始時間の見直しや時差勤務制度(フレックスタイム制度)の導入を検討する企業もある程度は増えていくものと思われます。
しかしながら、日本はもともと農耕民族であり共同作業をしていた歴史的な背景から、従業員個々への裁量は低く、9時までの出社など決められた時間で勤務することが一般的であります。また、時差勤務(フレックス)を認めていても、制度上は導入されているが実際は殆どの場合において提示出社が要請されているという場合も多くあります。
もちろん、業務内容によって時差勤務が可能であるかなどは事情は異なりますが、このオフピーク定期券の導入を機会に日本企業も従来の働き方を大きく見直す必要性が出てきそうです。