米国上場企業で人員削減が増えている理由とは、日本企業への影響は?

米国上場企業で人員削減を行う企業が増えています。新型コロナ禍でデジタル需要が加速する中、ナスダック市場に上場しているハイテク企業を中心に採用を増やし、新たなサービス開発など投資する好機と考えられていましたが、コロナが落ち着きその判断が予想していた未来と異なりその反動で人員削減が相次いでいます。今回は米国企業で人員削減が増えている理由と、日本企業でも人員削減が行われるのか考えてみました。

米国企業で人員削減が相次ぐ

米国企業で人員削減を行う企業が増えています。人員削減はナスダック市場に上場するハイテク企業を中心に2022年後半から人員削減を行う企業が増えてきていましたが、現在ではハイテク企業以外の一般的な企業においても人員削減を行う企業が増えている状況です。

マイクロソフトは人員削減の規模として約1万人、Googleは1万2000人など、ハイテク企業を中心に大規模な人員削減を行っている他、ハイテク企業以外では、金融大手のゴールドマン・サックスが3200人、日用品のスリーエム(3M)は2500人を削減することを発表しています。

2023年2月3日の日本経済新聞の記事によると、米国の人員削減の規模は2023年1月時点で10万人に達していると報じており、ハイテク企業が4割を占めるとしています。一方で、米国の失業率については、人員削減が相次いでいるものの、低水準で推移しており、2023年1月度の雇用統計では、非農業部門の就業者数は前月から51万7000人増えたとしており、人員削減は続いているのもの人手不足感もあることから、就業数が現時点では上回っている状況であると言えそうです。

米FRBの利上げ継続でハイテク企業の投資意欲の低下

ハイテク企業を中心に米国企業で人員削減が続いている理由の一つとしては、米国の中央銀行であるFRBが継続的に利上げを行っていることにあります。株式市場では金利が上昇すると株価は下落するというのが一般的な傾向として知られていますが、金利が上がると、企業が金融機関からお金を借りる際の金利が上昇するため、企業の投資意欲が低下し、業績向上の期待が見込めないことにあります。

特に、人員削減が目立っているハイテク企業においては、コロナ禍においてデジタルサービスの需要が急拡大することを見据えて、コロナ禍を好機と捉え、積極的な投資に出たのが仇となっている状況となっていることが伺えます。新たなサービスの開発など投資を積極化する中で多くの人員を雇うものの、コロナの状況が落ち着きつつある中で、経済活動が実社会に戻る中、これまで急速にすすめていたデジタル投資が過剰となった他、金利の上昇も相まって、新規投資の継続が難しくなる中、過剰な人員を抱えることになったわけです。

日本企業でも人員削減は始まるのか?

米国企業で人員削減が増える中、日本企業への影響はどうなのか気になります。日本では米国とは異なり、低金利状況が続いており、その影響で円安が加速したこともありますが、日本企業にとっては、投資をしやすい環境にあるといえます。また、日本国内では人手不足も深刻化しており、求人市場においても、企業が人を選ぶ状況から、個人が企業を選ぶ状況となっています。そのため、一般的な日本企業においては、米国のように大規模な人員削減は行われないと予想をしています。

一方で、日本でも新興企業を中心に米国のハイテク企業同様の事業を行っている企業もありますが、同種の企業ではすでに業績低迷に陥っている企業も存在しています。例えば、料理サイトを運営している「クックパッド」は、競合の激化に加え、広告収入の低迷により、2022年12月期の決算発表で、最終損益が34億円の赤字を発表しました。更に、希望退職者を募集を開始しています。また、新規事業として進めていた5事業についても終了する方針を発表しています。

一昔前までインターネット事業は、サービスを作れば儲かるという時代ではありましたが、近年では競合激化に加え、追跡技術の封じ込めや個人情報保護の高まりなど、広告収益が期待しづらい中、業績低迷する企業が目立っています。私もこれまで運営していたインターネット事業を売却し、コロナ禍で進めていた事業への新規投資も凍結いたしました。

これからは、ハイテク企業が急成長するという時代は終盤を迎え、これを乗り越えて持続的に成長ができる企業を選んで投資する時代となりそうです。

この記事を書いた人

私は投資家として国内、米国、中国株式を中心に運用を行っています。また、新たに法人を設立し、新規事業の開業準備を進めています。